No.01 — 04
Category日々のこと
Date2026.09.24
Read約2分
私のまわりのヘンな人シリーズ

6日目の蝉

文:岡田寛子 / commonseeds editor

9月、涼しくなった通勤時間、地面でひっくり返っている蝉を見かけた。仰向けになって、途切れ途切れに鳴きながら足をジタバタさせている。それを見て、約半年ぶりに元彼のことを思い出した。「なんてこった平日の朝から」と思った。

4月、1人と2匹で東京へ引っ越してきた。本当は、当時同棲していた蝉と一緒に引っ越す予定だった。引っ越しの日をLINEで明記して伝えていたにもかかわらず、蝉はなぜか同じ日に韓国へ行く予定を入れていた。「忘れてた」、それが蝉の精一杯の言い訳だった。「なんてこった、本当に面白い蝉だな」と思ったけれど、現実は面白いでは片付かない。結局一人で引っ越し準備をして、当日は友人に手伝ってもらいながら上京した。面白い人間にしてあげられなかった自分にも原因はあったと思いながら、「ああ、もう普通に幸せになろう」と思ってお別れした。

元々なぜ別れないのかと多くの友人たちに言われるほど性格が合わなかった。長い時間一緒にいればいずれ馬が合うとおもっていた。好きな音楽とか映画とかカルチャーや食べ物が近くても、どうもうまくいかないことがあるんだなと初めて気づいた。

蝉は地上では7日間ほどしか生きない、とよく言われる。地中では3〜7年、木の根から樹液を吸って育つのに。そもそも地上に出てからも、実際は2〜3週間、長ければ1ヶ月ほど生きるらしいのに。「僕、全然寿命が短くてかわいそうなんです」みたいな、ずるい感じが彼にとても近い。都市化が進んでも人間の生活圏の近くに生息し、人工物や人間の活動の恩恵を受けながら生きるほどしぶとく強い。

誰にでもできることを誰もできない物量で誰かの一助になるような服をコトコトと作っている。がんばれ

岡田寛子commonseeds担当者/エディター・キュレーター

文筆とキュレーションを軸に"Around the common seeds"の日々の事、アート、ファッションについて書いています。

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