No.01 — 01
Category日々のこと
Date2026.10.15
Read約2分

フリーランスAさん、独立記念日とKENZOのTシャツ

文:岡田寛子 / commonseeds editor

ギャラリーIに勤めていた頃、催事へ販売出張に出ることがあった。催事には他のギャラリーのスタッフも集まってくる。その中にいたのが、同業者のAさんだ。

社会人3〜5年目で独立する人は多い。Aさんもそのひとりで、これからフリーランスのアート販売員として歩き出そうとしていた。独立後は私のいたギャラリーにも入る予定になっていて、私の先輩スタッフとのこんな会話を聞いた。

Aさん「服装はどんな服で行けばいいですか?」

「Tシャツとか、カジュアルな服装で大丈夫ですよ」と先輩スタッフ。

Aさん「僕、ずっとスーツでしか働いたことがなくて。カジュアルって難しいですね……」

Aさんは何を着ればいいかわからず、困った顔をしていた。すると先輩が、「次の展示のテーマが『動物』なので、動物のTシャツなんていいんじゃないでしょうか」。

その瞬間、「ちょうどいいTシャツがある!ありますあります!!」と、Aさんの表情がぱっと晴れた。

翌日は展示の最終日。遠方から来ていたスタッフは、スーツケースを転がして出勤する。Aさんも同じようにスーツケースを持ってきていて、そこから愛用のTシャツを引っ張り出して見せてくれた。

Aさん「これ、このTシャツでどうでしょうか!?」

昨日の不安そうな顔はどこへやら、満面の笑みで見せてくれたのは、KENZOの動物グラフィックT。新しい一歩を踏み出すAさんの勇気に感激しながら、お気に入りの一枚がAさんの明日をつくっているのを目の当たりにした。これぞファッション、という瞬間に久しぶりに立ち会えて、ただただ嬉しかった。

私は服を販売する時いつも考えている。誰かがクローゼットからその服を選ぶ、朝のこと。「この服を着る日は、どんな一日になるだろう。朝は眠い? それとも、窓をパーッと開けたくなるくらい前向きな気分?」服が誰かの今日をつくっている瞬間に出会えると、たまらない。

社会人3年目、5年目。フリーランスや独立、転職を目指していますか? そんなとき、あなたの明日を支えてくれているものは何ですか?

岡田寛子commonseeds担当者/エディター・キュレーター

文筆とキュレーションを軸に"Around the common seeds"の日々の事、アート、ファッションについて書いています。

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